街の中の化石探検

午前中、県立美術館で絵を堪能して、護国神社にお参り、御朱印をいただきます。

護国神社は、明治維新から第2次大戦に至る英霊で、靖国神社に祀られた方のうち福井県出身者が祭神とされているということです。

2014.06.01
2014.06.01

安政の大獄で処刑された、福井藩士、橋本左内が祭神のお一人として祀られており、左内の文箱の表に書かれていたという「急流中底之柱、是即大丈夫之心」の石碑が立っています。

「急流にあっても動じず泰然としているものこそ大丈夫(優れた男子)である」というところらしい。

才能ほとばしる左内は、緒方洪庵の下で蘭方医学を学んだ後、24歳にして、松平春嶽に重用されます。

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護国神社

春嶽を助け、一ツ橋慶喜を擁して、開国論の論陣を張り、井伊直弼に弑されたのはなんと、26歳の若さであったと・・・

若さを超える鋭い危険な刃を井伊直弼に突き付けた故の極刑だったということでしょうか。

井伊直弼の失脚後、復権した春嶽の傍らに左内がいたら、大きく幕末に貢献していたのでしょう。

護国神社
護国神社

「探検」は13時からで集合は12時半、福井駅西口とあります。

車をどこに置こうか・・・一応、西口に地下駐車場があるのを確認してありましたが、福井に来たら、養洪館にお目にかかって帰らねばなと。

「探検」の後に、市立歴博と養洪館をセットで鑑賞することにしておいて、とりあえず、歴博の駐車場に車を置かせていただきます。

橋本左内
橋本左内

駅前で昼飯して時間をつぶそうと歩き出しますが、駅舎が見えずに不安、後を歩いていた人に訊くと、ホテルルートインが見えるのであれを目指せばいいですよと。

もう少し時間を余していれば城跡の中をお散歩しながら行くところですが、最短ルートのお堀端を選択します。

駅前にでると、東横インにレストランがあるようでしたが、そのほかに食事できそうなところが見当たらず、結局駅のスタンドのソバで済ませます。

アンモナイト
アンモナイト

暖かいソバを食べてしまって、一汗吹き出ます。

気温も高くなり、暑くてしょうがないので、ビル内の西口の表示があるあたりで待ちますが、時間近くなっても、人の集まる気配がありません。

もともと、こういう企画だと子供だけしか集まらないのではないか、俺みたいな年寄りは浮いてしまうだろうなと不安で、恐竜博物館に電話で問い合わせをしていました。

巻貝
巻貝

年齢に制限はありません、まだ人数に余裕があるのでネットで申込みしてくださいと・・・質問の意図は少しちがうところにあったのですが・・・

ええい、周囲の目を気にせず、自分の興味のままにふるまおうと、申し込んだ次第でした。

時間を過ぎても見当たらず、外を覗いてみると、出口から少し離れたところで、恐竜博物館の黒いTシャツを着た若者が準備をしていました。

サンゴ
サンゴ

案の定、参加者は自分以外は子供連れの若いお父さん、お母さん・・・

一人だけ50歳代くらいのおじさんが単独参加されていました。その人の着ているシャツを何気に見ていて気が付いたのですが、化石模様です・・・

歩いているときにお訊きすると、まさに化石大好き人間です、とのこと、やはり、と思うものの、自分に化石の知識乏しく、話が続きませんでした。

アンモナイト
アンモナイト

まず、本日の探検の案内をしていただく、恐竜博物館の後藤道治さんから本日の概要と注意事項の説明があります。

街の中のビルにはヨーロッパで生産された大理石や石灰岩のパネルが多数使用されており、そのパネルの中に、古生代、ジュラ紀、白亜紀などの化石が見られるのだそうです。

恐竜博物館では、おりに触れ、市内のビルの観察をつづけており、本日のような観察会で結果を定期的に周知しているようです。

べレムナイト
べレムナイト

配布された資料の中に福井市街で発見された化石のあるビルが28件、リスト化されていました。

対象の壁や床を持つ、お店やビルのオーナーも過去に開催されたこういう催し物で啓発されて、興味を持つ方がでてきているようです。

独自に後藤さんに頼んで説明書きを作成してもらって壁に表示したり、新たな発見ではないか、後藤さんが来たら聞いてみようと記しをしたりとか、興味を持ち始めておられるようでした。

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後藤さんの注意事項の一つにご自身の経験談がありました。

東京で大学の同窓会があり、2次会への移動のため、日本橋高島屋の中を集団で歩いていて、壁の大理石パネルの化石に気が付してしまったのだそうです。

職業病がでて、つい講義を始めると、仲間が皆、集ってしまい、大いに通行の妨げとなったようで、守衛が飛んできて大目玉をくらったのだそうです。

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お集まりのみなさんのうち、今日を境に、化石に興味を持たれた参加者は、街の中で思わぬ発見をすることがあるかもしれない。

その時でも、地面に座り込んだり、人数で道をふさぐようなことはしないようにすること、お店の前で、観察をする場合には、不審者と間違われないように、お店やビルに断りをいれることなどの注意事項がありました。

探検の最初は駅前の加藤ビルでした。

アンモナイトの内部構造説明模型
アンモナイトの内部構造説明模型

守衛さんにお断りした後に、後藤さんから化石の実例の説明を受けて、その他に、みんなで探してみてくださいと自由行動になります。

日曜日のことゆえ、ビルの中の事務所はお休みだったのでしょう、人の出入りは全くなかったので、問題なかったのですが、入り口ホールは15人くらいの探検隊メンバーが占領し、床や壁を探し回ります。

子供たちは後藤さんのお話をきちんと理解して、なんとか自分たちで知られていない化石を見つけようと必死になっています。

博物館のアンモナイトの化石
博物館のアンモナイトの化石

子供達がしゃがみこんで探す視点は博物館の方たちが、今まで見てきた位置よりはるかに下にあって、後藤さんを始めとした博物館の方も気が付いていなかった「新発見」が結構でてきます。

博物館の方の「知らなった」、「すごい」、などの賞賛の言葉が、子供たちをまた新たな発見に駆り立てて、次から次へと報告が続いて、このままここで時間を終了してしまうのか、という勢いでした。

子供たちが化石の時代ということに対して、どれくらい明確な時間的感覚を持って興奮しているのかはわかりません。

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参考用オウム貝

おそらく、彼らのスタートは恐竜で、恐竜に対する強烈なシンパシーがあり、その恐竜と共通する時間と同じ横軸にある化石というとらえ方で興奮を呼ぶというところがあるのかと思います。

興味の入口はいずれにしろ、「科学するこころ」を芽生えさせるという面で、素晴らしい企画だと思うし、恐竜博物館自体が科学に基づいて、子供たちの想像力と創造力をプロモートする強力な武器になるのだと、目を輝かせて走り回る子供たちに、ひそかな感動を覚えていました。

とえらそうに言いつつ、俗人のくまさん、子供に負けるかと懸命に壁や床を探し回っていたのですが・・・

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街中の食堂の表示板

面白いのは声高に自分の発見を主張することのできない若干弱気な子もいて、隣にいるくまさんに、ほらここにもあるよと、小声で自分の発見を教えてくれる子もいます。

知識の伴わないくまさん、それが化石なのかどうなのかも判断できないので、賞賛の言葉を待つ、彼らの期待に沿えずに、あいまいにうなるだけで終わります。

建材によっては化石模様が明確でなく、薄い濃淡だけの大理石もあります。人工パネルかと思いましたが、これらも天然大理石なのだそうです。

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歴博の庭園

一旦は同じように化石を内包する大理石を形成した後に、高温環境にさらされて、熱変性を受け、化石部分が溶損消滅したものと考えられるのだそうです。

ユアーズビルの地下のイタリアンレストランは店内にも貴重な化石が見られるのですが、営業中ということで、ガラス越しに外からの説明になりました。

カウンターで食事されている方たちはガラス越しにのぞかれて、落ち着かなかったことと思います。

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その後お好み焼きさんの壁のフズリナを見ますが、小さい円が密集しているだけという感じで、探検隊の少年少女には若干受けがよろしくない感じでした。

アンモナイトや巻貝の化石のようにそれとわかる形状の化石のほうが想像力をかきたてられるという点で面白さが違うような気がして、わかる気がします。

最後に東口に移動し、老人ホームの広いホールに入らせていただきます。

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今までの大理石とは少し趣がことなり、一面に敷かれた赤みがかった大理石にアンモナイトやイカに類似したべレムナイトの化石が点在しています。

ホームのかかりの方が気を使ってフットマットまで剥がして床面をさらけ出してくれます。その間、出入りするご老人たちが必死に床面を探検する子供たちを見て嬉しそうに笑っていました。

しばしの探検の後に全員が集合。アンモナイトの隔壁の増え方の原理を後藤さんの作製された模型を利用して説明を受けます。

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現存するオーム貝の隔壁の生成していく過程と類似していて、参考になるのだそうです。

アンモナイトは渦巻の中の隔壁に身体を接していますが己の身体が成長するともに、旧隔壁から身体が離れて、より太い内径のところに移動し、移動した場所で、より大きな隔壁を生成する。

こうして中心部から多重の隔壁を生成しながら、だんだん外側に外殻が延びていき、大きなものでは1〜2mにも成長するのだそうです。

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本日見たアンモナイトのさは最大でも20㎝程度でしたからアンモナイトの世界では大きいほうではなかったということになります。

身体の成長は環境に左右され、隔壁の生成は1年に一つということではないため、樹木の年輪のように、隔壁の数が年齢を表すものではないということでした。

3時過ぎにすべての行程を終了。じじいにも十分楽しめる内容で大満足でした。

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今度はのんびりと県庁の中を歩いて、歴博に向かいます。歴博と養洪館のセットチケットを購入し、歴博を鑑賞します。

といっても歴博は何回も来ているので、その都度、部分的に詳細に見て、他は足早に通り過ぎます。

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養洪館を池の反対側からしばらく眺め、お茶室に移ってまた池を眺めてしばらく時を過ごします。
お茶室では抹茶のサービスをされていたようですが、自分が行ったときにはサービスは終了し、片づけをしているところでした。

今日は第1日曜日、大安禅寺の写経会のある日で、美術館と迷ったのですが、美術館と探検で十分満足の一日でした。また日を改めて写経に行きたいと思っています。

※付録

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左の写真は恐竜博物館のホームページのイベント紹介に乗っていたホテルユアーズの地下レストラン街の写真です。

後ろのほうで紺色のシャツで派手な帽子をかぶって、資料と壁を見比べているのはくまさんなのでした。はずかし。

くまじい
阿佐ヶ谷生まれの73歳

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