講演会は、新丸の内ビルの「エコッツェリア」で開催されます。
主催は高校の同窓会の建築部会。講演者はJR東日本建築設計事務所の田原幸夫さんです。
自分は大学の学科は応用化学で、この集まりに声がかかるのはいささか、忸怩たるところがあります。
昔、主催者の方が、高校同窓会の千葉分会の幹事をされておられて、分会に一度だけ、出席した時に、名簿に自分の名前を含めていただいたようです。
経緯はともかく、貴重なお話と見学できるとあれば喜んで参加させていただきます。
講演の最初に『復元』と『復原』のお話があります。
三菱一号館のように、昔あった建物を再現することを『復元』、東京駅のように、現存する建物の改修部分をオリジナルに戻すことを『復原』と呼んでいるとのことです。
①現存している駅舎の外壁部など再利用可能なものは最大限利用する。
②戦災で焼失した、屋根部と3階の外壁を新たに復原する。※
③南北ドーム内部の見上げ部分を資料を元に復原する。コンコースは新規の機能を持たせた設計とする。
※戦後の改修ではドーム屋根が角型になり、3階建が2階建になっていたものをオリジナルの形状に戻すということです。
これらの復原の他に、駐車場、機械室として地下1,2階を増設し、免震構造とするなどの、新規概念の設計も含まれています。
復原の話には、当時では考えられない様な緻密で贅沢な設計をしていたことが紹介されます。
東京駅は辰野金吾の設計で、営業開始したのは1914年。
第二次世界大戦の戦禍で屋根や3階部分などが大きな被害を受け、昭和22年に2階建に変更する形で改修されたのだそうです。
それは決して技術的な問題と言うより、経済的な面を含めて、修復の大前提が今回の様な「復原」になかったということなのでしょう。
詳しい話は覚えていませんが、まず、記憶にのこったのが、煉瓦が鉄骨で支えられた構造になっていること。
確か説明ではオリジナルの鉄骨ではないと言う話だったと思いますが、見学の時に連れて行っていただいた、4階のラウンジの壁の写真です。
次が、現在は建物の内側は煉瓦がむき出しになっているのですが、辰野のオリジナルは下図のような煉瓦の上に煉瓦タイルを張り付けた構造になっていたということです。
そのタイルも、均一なタイルで揃えるのではなく、構造の薄いタイルと厚いタイルを交互に組み合わて、強度を挙げているのだそうです。
煉瓦積みというのは端面は綺麗に揃わないので、その表面に形の決まったタイルをはめ込んで行くというはのは技術的にはかなり難しいことらしい。
また、戦後の修復で2階建にした時に、3階部分にあった柱頭飾りを、2階部分に移したものをまた3階に戻したこと。
免震構造とすることにしたが、ホーム側とのクリアランスが少なく揺れた時に干渉してしまうため、揺れの抑制のためのオイルダンパーが入っていることなど、興味深い話を聞かせていただきます。
技術的な講演の後に、ステーションホテルの責任者の方が、ホテル関連の説明がありました。
これこそ記憶が定かでないので、東京ステーションホテルの公式サイトを参考にさせていただきました。
講演にはありませんでしたが、見学の時の質疑で出てきた内容も含まれています。
「東京駅開業の翌年、1915年に東京ステーションホテルは客室数58室、宴会場を備えたヨーロッパスタイルのホテルとして開業しました。
壮麗な建築と最先端の設備で、国内外から数々の来賓を迎えました。
1923年の関東大震災では、数々のホテルが倒壊・焼失するなかで、多くの避難者を受け入れました。
第二次世界大戦後の営業再開時には、日本初として人気を博したコーヒーショップや後に伝説のバーテンダーを生むこととなるメインバーも誕生しました。
幾多の文人にも愛され、江戸川乱歩の「怪人二十面相」や内田百罾の「阿房列車」ではホテルが舞台に。
昭和30年代には、川端康成や松本清張も滞在し執筆しました。
そして、2006年から東京駅丸の内駅舎の保存・復原工事とともに一時営業を休館。全施設を改装して、2012年10月3日に再び開業いたしました。」
見学の際に、質問がでて、松本清張の『点と線』はホテルのホームを見下ろすことのできる部屋で執筆されたということでした。
線路を見ながらトリックを考えたのだろうと。
お二人の講演後に東京駅の南ドームに向って見学に向います。
講演だけ聴いて帰られた方も居たのだと思いますが、それでも50人以上の集まりだから、大変です。
2階に上がるエレベータも何回かに分ける必要がありました。2階で説明を受けた後、ホテルの中をぞろぞろと歩いて、階段で4階のラウンジまで上がりました。
丸の内側から見るとスレートの屋根しか見えないのですが、ホーム側のラウンジの屋根はガラス張りになっていました。
素晴らしいラウンジで、カメラを撮りまくります。今回、荷物になるのでKiss4を置いてきてしまったことをちょっと後悔・・・
このラウンジは宿泊者の朝食のブッフェとしてのみ、使用され、公開されることはないので、ホテルに宿泊しない限り、見ることができないのだそうです。
質問の中に、こんなに素晴らしいところをディナーで解放しないのかと要望混じりのものもありましたが、その予定は全くないとのこと。
なかなか自分が東京のホテルに泊まる機会はなさそうですから、有り難いことです。出張の帰りに品川に泊まったけどあんな夜中について早朝立つ使い方はもったいなくできないし。
女性の参加者はこの際とトイレに行って喜んでいる人もいます。自分も行くべきだったか・・・
さすがに建築関係の人達の集まりで、絶え間なく質問が続きましたが、ようやくひと段落して、エコッツェリアに戻って、パーティがあります。
エコッツェリアは三菱地所の施設で、「環境」と名が付く集まりあれば使用できますと、同窓会の世話役格の三菱地所の会長さんがご挨拶の中で説明してくれます。
自分をメンバーに入れてくれた方の挨拶があり、ジョサイア・コンドルと辰野金吾の関係についてのご自分の思い出話をされていました。
主目的の東京駅見学を果たし、適当に食事をさせていただいて、早めに帰宅しました。
閑話休題・・・
昨年の暮れに中止となってしまってお目にかかれなかったプロジェクションマップ「東京ミチテラス2012」の映像が、You Tubeにアップされていました。
9月にも下記の作品が上映されたらしく、東京駅復原記念のプロジェクションマップがアップされていました。
両方とも面白いけど、これはやはり、スクリーンの東京駅を肌で感じながら、闇と興奮を周りの人と共有していくべきものなのかと・・・
以下を参考にさせていただきました。