セザンヌ展の時に書きましたが、ブリジストン美術館は開館60周年記念の「あなたに見せたい絵があります。」を開催中です。
昨年、コレクション展「なぜ、これが傑作なの?」( 2011年1月26日)で自分の好きな絵が揃っている美術館と思いました。
特に、ピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」にまた会えると・・・
ブリジストン美術館の展覧会の説明をお借りします。
「石橋財団ブリヂストン美術館は、2012年1月に開館60年を迎えました。
これを機に、当館と石橋財団石橋美術館(久留米)の両館が所蔵する絵画の代表作品109点を一堂に集め、石橋財団コレクションの粋を楽しんでいただく特別展を開催いたします。
石橋正二郎コレクションから始まり、60年間積み重ねた収集活動の成果をじっくりとご堪能いただきたいと思います。
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ブリヂストン美術館のコレクションの中心は19世紀から20世紀にかけての西洋絵画ですが、その西洋美術に影響を受けて出発した日本の近代洋画も充実しています。
また、今回の展示には、近代以前の画家として雪舟とレンブラントも含まれます。様々な魅力に溢れた石橋財団コレクションをじっくりとお楽しみください。」
昨年の展覧会を詳細に覚えていないし、リストで比較した訳ではないので、前回と異なる絵がどれだけあるのかは明確ではありませんが、記憶にある絵以外に面白いと思う絵が随分ありました。
鑑賞後の楽しみに、お気に入りの絵の絵葉書の購入があります。
前回購入した絵葉書と重複を避けて、選びましたが、それでも随分買ってしまいました。まあ、一枚50円というところが後押ししているところがありますが・・・
多すぎるのでここに載せていないものも何枚かあります。
会場にブリジストンの創始者である石橋正二郎氏とその美術コレクションの説明が掲げられており、興味深いものでした。
ブリジストン美術館の公式サイトで詳細に説明されていますがその中に、開館時の正二郎氏のスピーチとしてご自身の言葉でコレクションの説明がされています。『ブリヂストン美術館館報』(1号、1952)
「今日有名な坂本繁二郎画伯は当時17〜8歳の頃私達小学生の図画の先生でありました。
其後、坂本さんは東京に去られましtが、30年を経て、再び郷土久留米に帰られて丁度私の住居の櫛原町内に居を構えられ、爾来昵懇にして居ります。
その坂本さんから
『我々の先輩、青木繁は大天才画家で郷土久留米の非常な誇りである。 その作品も久留米地方に多く散らばっているが、将来残らぬような事があっては残念で、何とか集めて貰い度い。』
と云われて集めたのが私の絵画蒐集の始りです。
其後昭和10年、私は居を東京に移し、更に青木繁の画の蒐集を青樹社に依頼し、1枚の絵に何年も骨折って手に入れたものもありまして、代表的作品は一応揃ったと思います。」
「それから藤島(武二)さんとも懇意になりました処、藤島さんが述懐されるには、
『自分が一生の仕事とした作品が将来どうなるかを考えると実に淋しい。パリ滞在時代の絵は盗難で失ったがイタリーで描いた絵の中、気に入ったものだけは今以て人手に渡さず纏めている。これが散り散りになって行くことは心配でならない。』
という事でしたので、私が青木繁の作品と共に他日、美術館を設けて保存しましょうという事で愛蔵の絵を私に譲られました。」
「それから外国のものは、フランス印象派と現代のものを主流とした絵画及びロダン其他の彫刻等近代美術を私の好みで手に入れたもので、戦時中は栃木県に疎開し、戦後、住宅と共に接収されました。
昨年秋、住宅が米国務省に買上げられて美術品だけ私の手許に戻りました次第であります。」
「又序に申上げますが、一昨年私が渡米いたしました際、米国の主なる美術館を見学して聊か知識を得ました事は、ニューヨークのモダンアートミュージアムはロックフェラーセンターにあって最も便利で、一寸飛び込んで観られるように造られて居りました。
吾々の今迄の観念では、美術館というと大きな公園の中に建てられた立派な大理石造りの宮殿式のものを考えます。
事実、米国の大美術館は大体そうなって居りますけれども、このモダンアートミュージアムを見ましてから、交通の最も便利な都心にある此のブリヂストンビルの中に開設することは、理想的であると考え、愈々決意した次第であります。」
途中省略・・・「又、先日、ロックフェラー夫人が態々私の家をお訪ね下さいまして、土蔵の中の絵を御覧になり、あなたの方と自分のやっているモダンアートミュージアムは兄弟のお付合をし度いと申されました。
その好意に感謝している様な訳で、美術を通じて国際親善が出来る事と、美術は如何に人間の心を豊かなものにするかという事を痛感致しました。」
「更に又、今日容易に欧米に留学出来ない画学生の勉強に供することにもなり、又一般大衆の心を慰めることが出来れば社会的に大きなサービスとなりますし、
又、私のコレクションの中に画家畢生の名作品もあるかと思われまして、かかる貴重なる文化財を個人で只死蔵するに忍びないものがありますので、今日これを公開して常設展観に供する事とした次第であります。」
スピーチを口語筆記したものが掲載されたのだと思います。畏れ多くも、一部、文章の切れ目を勝手に入れたりしてしまいました。
訥々と語られるなかに、ちりばめられる重要な事実の重さに感激します。
当然財力がなければ出来ないことではありますが、その財力の源になる仕事を成し遂げる情熱と努力を、仕事と同じ様に絵画の収集に向け、成功して行った経緯が偲ばれます。
正二郎氏はさらに国立近代美術館を建設して寄贈したとの記事がありました。
自分の部屋に飾ってあるルノワールの「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」とピカソの「腕を組んですわるサルタンバンク」にも再会を果たし、やはり来てよかったと満足の展覧会でした。
今まで、ポーラ、Bunkamura、三菱一号館、国立新美術館とリピートする美術館がありましたが、敦賀との往復で気軽に立ち寄ることのできると言う意味でも三菱一号館と併せて、ブリジストン美術館詣での頻度が高まりそうです。