200人程で満杯の小劇場ですが、照明の消えた舞台の背面に、大きなガラス張り越しに竹林が揺らいでいました。
くるま椅子劇場は先ほど見た竹人形館に展示されていた人形を使った人形浄瑠璃を行う若州人形座(http://www.jyakusyuu.com/ )の活躍舞台となるということでした。
「若州一滴文庫は、福井県大飯郡本郷町生まれの作家水上勉(大正8年3月8日〜平成16年9月8日)が主宰していた若州人形座の拠点として、また宗教・美術・文学などの資料を展示する施設として建設されました。
水上氏の想いは、子供たちが本を読むことで人生や夢を拾ってほしいということと、文庫の名称にもなっている「曹源一滴水」の思想を顕彰することにあります。
『大都市に建っているようなものはいらない。都市の物真似はいらない、小屋でいい。』
という水上氏の思いをもとに建築されました。
谷間に溶け込んでいくような佇まいの建物、人を包み込み展示物がバックとして十分な役割を果たし、互いに協調し合い見る者に訴えかける空間をめざし、それにふさわしい材料・工法が選ばれています。(1990年 中部建築賞受賞)」
Wikipediaによると「みなかみつとむ」はペンネームで本名は「みずかみ」なのだそうです。晩年は長野県小諸市で過ごされたのだそうです。
一滴文庫は創設されたあと、使用されずに、閉館状態となっていましたが、平成12年に大飯の若いお父さん達が立ち上がり、信州の水上勉さんを訪ねます。
一滴文庫を地元で運用させてもらうことを許可され、大飯町にも働きかけてNPO法人を立ち上げて、平成15年から再開されたということのようです。
また水上勉が2万冊を贈呈したとされる「文庫」は開架式になっていて好きな図書を和室の読書スペースで閲覧することができます。
そのくるま椅子劇場で、9月29日に今川裕代(http://www.hiroyoimagawa.com/)さんのピアノリサイタルがあるのだと。
定員200名、2000円ともったいないような料金設定で、思わず購入していました。
自分は全く知りませんでしたが、今川裕代さんは福井県ご出身のピアニストでお若い感じですが国際的な知名度も高い方のようです。
お話の中で、お忙しい身でありながら日本の各地でのリサイタルを心掛けていて、日本中を回っていることも知りました。
地方の公共施設に眠っているピアノを慈しむ行脚なのだそうです。
曲の合間の恥ずかしそうな、でも信念のこもった今川さんのお話も素晴らしいと思いました。
昨年12月にくるま椅子劇場を訪れ、ここで演奏したいと決定されて、それから水上勉の本を読んだり、ご自分の中での準備を進められて今日を迎えたというお話がありました。
合間に、客席におられた渡辺 淳さんにお話しを振って「くるま椅子劇場」のお話を引き出されておられました。
渡辺先生のお話では舞台背景のガラスは開館当初は一枚ガラスであったのだそうです。ある朝、劇場を訪れると舞台一面が白く染まっていた。
一瞬、雪かと思ったけど、確認するとガラスが破損し、細片が舞台一面に広がっていたということだったのだそうです。
その後、やむを得ず、一枚ガラスをあきらめて、真ん中に桟を入れることになったとのことでした。
技術的に一枚ガラスを再現することはできたのだとは思いますが、きっと建物の構造から強化する必要があって、費用的には大変なことになったのでしょう。
今川さんのピアノは情感のこもった素晴らしい演奏だと思いました。
途中で感激のあまり、うるうるしてきましたが、まあこれは涙腺の栓のパッキンがボロボロ状態のくまには仕方のないことです。
9月半ばから、10月半ばまで小浜市の秘仏公開があるので、前日小浜に泊まって、と考えていましたが、9月28日に敦賀で日本酒のお誘いがあり、断念。
10時半ごろに部屋を出て、途中昼飯を久しぶりの「淡水」でと・・・これがあやうく敗因になるところでした。
11時半に店に着くと、もう客待ちがあって、結局、鰻重が出てきたのが、12時30分ごろでした少し慌て気味に食事を済ませましたが、一滴文庫に着いたのが開演ぎりぎりの1時45分ごろになってしまいました。
それでも、まだ暑さの残る、若狭の山間の文庫で充実のひと時を過ごしました。