入院から手術後までの記憶が実は余り定かではありません。思い出せる限り書いておこうと思います。
※今回の写真は2003年8月16日の平泉寺です。・・・随分、前になります・・・以前「白山神社(平泉寺)苔生す寺」を書いた時に一部の写真は使っており、再掲になります。
昼食を終え、寝巻きに着替えて「病人」になります。
間もなく師長さんが来て、必要な場所を案内しておくから付いてきてくださいと・・・緊張して付いて行くとナースステーションで男性看護師を呼んで、「〇〇くん、案内して」とパスオンされます。
トイレと給茶器とお風呂、シャワー室を教えてもらい、部屋に戻ります。
4、5日の入院なのだから贅沢させてもらおうと個室をお願いしました。携帯もネットも自由とのこと。ネットは業者に来て、モデムを設置してもらう必要がありました。
なんと1日150円・・・NYのホテルは一日2500円だっけ・・・手術後、テレビは見る気がしなかったので、一度もテレビカードは購入しませんでした。
本を読んだり、PCに溜めこんだ写真の整理したり、でも、ともかく眠くて、寝てしまうのが一番時間が長かったですが・・・それでも一日中、昼も夜もYou Tubeのお気に入りで音楽を流しっぱなしにしてました。
持ち込んだのは自分のPCで会社のPCは部屋に置いてきました。
自分のPCでは、会社のメールは見ることができないので、安心して休めるというところです。
気になることは入院前に済ませてきたし、なにかあれば携帯がくるだろうと・・・
病院内の案内を受けた後、入れ替わりに色々な担当の方が書類を持ってきて、サインをさせられます。
手術前にヒゲを蓄えていたのですが・・・
手術時に喉にパイプを通すため、噛まない様に、口に筒を固定するのだそうです。胃カメラのときに咥えさせられる奴みたいなものだと思います。その筒を口に固定するのにヒゲが邪魔になるので剃れと・・・
せっかくこれを機会に伸ばそうと思っていたのですが、売店でヒゲ剃りを購入して「断髪式」を・・・
実は、口元がもじゃもじゃして鬱陶しかったのでよかったかも知れません。
昼過ぎに奥さんと一緒に先生のお話を聞く約束でしたが、先生が多忙で夕方になります。
下の娘が夏休みをつぶして来てくれます。
結局3人で話を聞くことに。この際とばかりに色んなこと訊く奥さんに先生は慎重に、すべての可能性について説明します。
それらの会話の内容の大半については当人が事前に先生に聞いてきたことなので、充分承知して手術に備えているつもりでした。
それでも繰り返し、万が一の話を聞いていると、いささか気が滅入ってきます。だんだん「くま」の口数が少なくなり、顔が暗くなりつつあったのかもしれません。
先生が自分を気にして目の端で見ているなと・・・気が付いて顔を挙げますが、それでも眉間にシワが掘り込まれていたんだと思います。
案の定、夜、看護師さんが、「先生が今夜これを飲んで寝てくださいって・・・」と安定剤を渡してくれます。先生の配慮に感謝して、有り難く、服用させてもらいました。
夜食は牛乳とカップに入ったトロッとした蕎麦湯みたいな重湯(おもゆ)。
重湯というのは前にも経験したことがあるのかどうか・・・腸の内視鏡だったか、透視だったか、前夜の食事用にとレトルト品を渡されたのが、そうだったのかな・・・障子糊そのものの臭いで、吐き気を催し、絶食で検査に臨んだことがあります。
今考えるとあれがきっと重湯だったのかな・・・
この日は臭いも気にならず、「これが重湯か・・・」と少し口に入れては噛んで、5口ぐらいで終了。
普段なら腹が減って眠れないかもしれない気がしますが、それ程空腹感はなく、安定剤の効果も有ってか朝を迎えます。
8月4日手術日です。朝6時頃までは水を飲んでいいとのことでしたが、あまり水を飲む気にもなれず・・・
先生が顔をだして、「それじゃあ、くまさん、今日、頑張るからね」と励ましてくれます。
奥さんと娘も到着して、いよいよ準備開始。
麻酔を効きやすくする薬なるものを注射され、ベッドのまま、手術室に向います。
看護婦さんと奥さんの話を聞いていると、家族の待機室があって、そこで奥さんと娘は待っているらしい。
入院時の注意事項に貴重品を放置しないというのがあったな・・・とぼんやり考えます・・・
「そう言えば、財布を引き出しに入れっぱなしだった・・・奥さんに預けておけばよかったな・・・」
まだ麻酔をされていないのに、なんとなくベッドに金縛り状態。皆もそこそこ、緊張しているなかで、今頃そんなこと言いだす雰囲気じゃなさそう、もういいか・・
今考えるとつまらないことを考えながら、手術室に向ってました。二人と別れて手術室に入って行きます。
会社の手術経験のある人間が「テレビみたいですよ」って・・・
意味、判んなかったけど、手術室の中を移動しながら、天井のライトを見てて、「ああ、そう言えば『ベン・ケーシー』だな・・」と。
「はい、ちょっと身体をこっちに持ってきて。」
横に少し身体を動かすと背中がコンベア状のものに載って、手術台に向かって身体が動き出します。
手術台に移されると、周りで色々準備する気配が始まります。
麻酔の先生が、麻酔の吸引装置を鼻と口に被せ、「大きく深呼吸して。すぐ眠くなりますよ。」
「すー」っと1回目、さらに2回目ろ大きく吸います。「眠くならんな・・・」と、3回目を吸いかけたところで意識がなくなりました。
以来、退院するまで、ず~っと、霞みのかかった世界になってて、起こったことの虚実、物事の前後関係はオボロで判らないままです。
気が付くと、元の部屋に寝ていて、口に酸素がきて、点滴がぶら下がって、妙にオシッコがしたくてたまらない。
「どうですか?」と訊かれるので、「オシッコがしたい」というと、今管が入っていて、オシッコは自然に流れていると。
膀胱の中に管が入っていてそれが刺激するのでオシッコがしたい感じになるのだそうです。
眠くて、眠くてそのまま、次の日を迎えます。と言うより、当日の記憶がよみがえらないと言う方が正確ですが。
翌朝、外科部長の総回診。10人くらいの集団が来て、先生が部長に自分のことを説明してます。
外科部長さん「くまさん、腹腔鏡手術で出来る今の時代でよかったね。その大きな身体で開腹手術したらとんでもない傷跡になってたよ。」「はあ、ありがとうございます・・・」
なるほど、そういうもんか・・・
名古屋で研修中の長女が休みが取れたと、3人で来てくれます。それでも眠くて眠くて、ひたすら寝てしまいます。
長女は看護師のくせに、あるいは看護師だからか「お父さん、元気がない!」と叱ります。
そう言われると情けないけど、元気がでない・・・
「オシッコの管を抜きますね。」と優しく看護師さんが言って、思い切り管を引っ張ると、オチンチンの中をパイプが走り、激痛が来ます。しばらく痛みが取れませんでした。
オシッコの管が取れたので、トイレは自分で行かねばならないし、なるべく歩いて内臓の動きを活発にしろと・・・
点滴を引きずりながら、娘達と病院の散策をします。まだ腹にドレン管が突き出ているのでなんとなく怖い。
術後、2日経過して点滴が取れますが、ドレン管が抜けません。ドレン管の上を覆っているガーゼがまだ赤く湿るのでなんとなく不安が募ります。
術後5日目で退院と言われていましたが、延期になるのかな・・・先生がきて、パイプを診て説明してくれます。
「ドレンパイプは内部の出血を排出するためのものなんだけど、くまさんの場合は内部からの出血はなくて、パイプを差しこんでいる開口部分の傷口から出ていて、パイプの外側に血が付いているようだ。
普通の人はこの状態でも傷口が癒えて行くんだけど、くまさんの場合は開口部の脂肪層が厚くて、ふさがり難いんだと思う。
だから逆にドレンパイプを抜いた方が治りが早いので抜くよ。」と・・・
パイプを抜く時には怖くて目をつぶってしまったのですが、見ていた奥さんによると、身体に入っていた部分が結構の長さがあってぞっとしたとのことでした。
結局ドレンパイプを抜いても、退院の日まで傷口が完全には塞がりませんでした。
外傷だけなので、問題ないということで予定通りの5日目で退院します。カサブタになるのにさらに1週間、カサブタが自然に取れたのは9月に入ってからでした。
手術直後に、奥さんと娘は取り出した胆嚢と石を見せてもらったのだそうです。
「おとうさんに渡すって言ってたよ」と言うことですが、そう言えば「石が21個あったよ」と言う話は聞いたけど見てないな。まあ、あまり見たいとも思わないけど・・・
先生に訊くと、「え?・・・そう言えば渡そうと思って白衣のポケットに入れて・・・あれ、渡さなかったっけ?」ってまあ、どうでもいいところになると目一杯いい加減になる先生。
後で、切開した胆嚢と石が並んだ写真を持ってきてくれて、「どうしても見つからない、ごめん、これで勘弁して」って・・・先生が気にするほど欲しい物でもないので、もういいやと思ってましたが・・・
結局、退院後の検査の時に、「くまさんに良いもの上げる。」って嬉しそうに、見つかった石を渡してくれました。
退院後の検査日を一週間後にしようと、予約して、退院します。食事も生活も普通でいい。風呂も湯船に入ってもいい。ただし、公衆浴場ではしばらくシャワーだけにとどめろ。1か月は激しい運動は避けろ。ゴルフも、その練習も我慢。山も我慢。と言い渡されます。
8月末から市のテニススクールに通う予定だったけど、これは自主規制・・・
酒も飲んでいいと言われましたが、この際暫く酒から遠ざかろうと・・・
退院後、敦賀に帰り、昼食を食べて寝てしまいました。眠くて、眠くて状態が続きます。
1回全身麻酔すると細胞が活性化するのに大分時間がかかるのか・・・などと考えつつ・・・精神的なものだと思います。